今日から俺は!! (1) (少年サンデーコミックス〈ワイド版〉)


軟葉高校への転校をきっかけに、「今日からツッパリ」を決意し、
外見をがらりと変えて、新しい学校生活をはじめる
三橋貴志(みつはしたかし)と伊藤真司(いとうしんじ)。

三橋は金髪、伊藤はとんがり頭の不良スタイルに大変身。

別々の高校から、同じ日に軟葉高校へ転入し、今日からツッパリを
はじめた2人は最初こそ衝突しあうものの、次第に仲良くなり、
言葉には出さないが互いに親友と認め合う仲に。

元々ケンカも強かった2人は、千葉で最強の2人組と恐れられるほどになる。


三橋は、その強さもさることながら、頭の回転が速く、時折、
勝つために巧みな戦略を見せるため、一部からは卑怯者と評されている人物。


逆に伊藤は、三橋と同じぐらい強いのだが、生真面目で義理堅く、
正義感が強い。反面、頑固で融通の利かない部分もあり、柔軟な発想をする
三橋とは対照的な人物である。



そんなチグハグな2人にある日亀裂が・・。



原因は、転校生の長井。


長井は、元々三橋達にケンカでやられた恨みを持つ福田という悪党の子分。

福田から命令を受けて、三橋達を襲ったが失敗したため福田から見限られ、
元の高校に入れなくなって、仕方なく軟葉高校へと転校してきた。



「長井は間違いなく福田の差し金だ!信じるな!」

と主張する三橋に対し、

「困ってるんだから信じてやらなきゃどーすんだ!」

と、長井を信じ、守ろうとする伊藤。


この意見の対立が原因で、2人は少し距離をとることになる。



さて、この長井。

誠実な態度で伊藤の信頼を勝ち取るものの、
本当は三橋の読みどおり、やはり全て演技で、
裏では再び福田の一味と通じ、伊藤をワナにハメようとしていた。


そして伊藤は、ある日とうとう長井の嘘に騙され、
何も知らず単身で、待ち伏せした福田達のもとへ。




・・・しかし、このワナを三橋は事前に見破っていた。





伊藤より先回りして、福田達の前に現れる三橋。



その三橋に驚愕する福田一味。



だが、三橋と伊藤は2人そろって初めて最強であることを知っている
福田達は、結局は単身で向かってきた三橋を見て嘲笑する。



勝利を確信する福田一味。



そんな福田達を見て、少し笑みを浮かべながら冷静に話しかける三橋。


三橋「ユカイだったろ長井、伊藤の野郎はよ
   おもしれーくれーカンタンに人信用しちゃってよ」


長井「なんだよ、アンタまさか俺を非難しようってゆーのか
   言っとくがよ、俺はこれっぽっちも罪の意識なんかねーよ
   この世の中、頭のいい奴が勝ちなんだよ」


三橋「まったく、その通りだぜ」


長井「フハハハ
   ホントよく言って聞かせろよ
   簡単に人を信用しちゃいけませんってな」










その瞬間、三橋の顔から笑みが消え、鬼のような形相へ!









三橋「テメーなんかに言われたかねー!!

   テメーにアイツの何がわかんだよ!!

   あいつはあれでいいんだよ!」



伊藤が侮辱され、本気で激怒した三橋が、福田達に襲い掛かる!




が、福田が手にしていた催涙スプレーで視界を奪われ大ピンチ!





もはや駄目かと思われた時。




実は、その会話を影に隠れて聞いていた伊藤が登場。
福田達の前に立ちはだかる。


伊藤の目には涙の後がうっすら浮かんでいる。



三橋にバトンタッチして、福田一味をギタンギタンに一掃しながら
伊藤が言ったのが次のセリフ。
「お前(三橋)がそんなこと言うなんて・・・言ってくれるなんてよ・・・!!」

なぜ、伊藤は思わず涙を流してしまうほど
こんなにも感動したのでしょうか?


もし、三橋が伊藤にワナであることを説得することで
解決していたのなら、伊藤はここまで感動しなかったかもしれません。


実はこの福田一味とのケンカが始まる直前、
三橋は伊藤と道ですれ違っています。


その時は、三橋は福田達の企みをすでに知りつつも、
伊藤にそのことを言わず、単身福田達のもとへ向かうのです。



なぜ三橋はそんなことをしたのでしょうか?


ワナであることを伊藤に説明し、
伊藤と2人で、福田達のもとに向かえばよいのでは?


しかし、敢えて三橋は伊藤に話さないのです。


恐らくですが、三橋は、本当は自分1人で
解決したかったのではないでしょうか?


憎まれ口をたたきつつも、実直で正義感溢れる伊藤を
三橋は友達として心から認めていたのでしょう。


「あいつはあれでいいんだよ!」


この部分のセリフには、伊藤自身が騙されていたことも、
ましてや、そのせいで自分(三橋)が苦労したことも、
そんなことは知らずに伊藤は伊藤のままでいい。

人を疑うことを知らない正義感溢れる男。それが伊藤の良さだ。

三橋は、そんなことを考えていたのかもしれないと思わせてくれます。




「陰徳(いんとく)」という言葉があります。


意味を辞典で調べると、
『世間に知られないよいおこない。ひそかに行う善行。』
とあります。


世間の評価や自己メリットなどを全く考えず、
人から喜んでもらえるようなことをして、ただ、もう、嬉しくてならない。


それが「陰徳」です。

宗教などでは最も徳が高い行いだと言われています。



まさに、この三橋の行いは、「陰徳」だったのではないでしょうか?


そして、この「陰徳」に触れた時、
人は感動の涙を流すのではないでしょうか。








ビジネスでも、お客様の見ていないところ、知らないところで、
どれだけ真剣にお客様のことを考え行動したかが成果につながったりします。



たとえばこれが、単に評判を上げるためのテクニックだとしたら
それは、もしかしたらお客様の心には響かないのかもしれません。



ただ、ただ、お客様に喜んでいただきたい。
お客様がそれに気づくかどうかはどうでもいい。



そんな想いが、お客様を真に感動させるのかもしれません。



以上、「今日から俺は!」より
今日のビジネスエッセンスをお届けしました。